私が事業会社人事部採用担当だった時、人材紹介会社の友人に強く勧められて外資系コンサルティング会社(A社)の面接を受けた事があります。書類選考が通り、現場担当者の一次面接、部門長の二次面接、人事部の最終面接を無事通過し、内定受諾書を貰いましたが早々にお断りしました。転職するつもりが無かったのもありますが、それ以上にA社の面接の進め方、及び会社としての採用戦略に疑問を持ったのが最大の理由です。

A社は売上げを延ばすべく、即戦力コンサルタントの大量採用を行っていました。しかし、コンサルティング業界という狭い業界で即戦力、且つ転職したい人がそんなにいる訳がありません。ですので、どうしても採用基準が甘くなるのは想定していましたが、A社は私の想定を遥かに超えていました。
面接では転職動機、職歴、転職してどんな事をしたいのかといった、面接の基本的な質問を訊かれました。勿論、事前準備しているので動機、職歴を淀みなく答えました。私は面接の中で「プロジェクトでどんな役割で、どんな事をしたのか、どう考えて行動したのか」などコンピテンシー面接の様に行動を深堀する質問をされることを想定していたのですが、「なるほど、分かりました」という反応だけ終了しました。端的に言えば、面接官からの突っ込み、職歴に関する深い質問が無いので、私の言った事をそのまま面接官が訊いているだけなのです。この頃、私は人事部採用担当でコンピテンシー面接を行っていたので、この手応えの無さにも関わらず先に進むA社の面接スタイルは、私が知らない新しい面接手法なのだろうかと興味と不安感を感じずはいれませんでした。このような調子で人事面接も終わりに近づき、私はどうしても我慢出来ず人事部の方に「御社では、どんな面接手法で、何を評価されているのでしょうか?」と訊いたところ「コンピテンシー面接です。」とのことでした。この瞬間、A社の大量採用は失敗に終わると確信しました。

A社は、面接官も人事部も人を評価する技術が無いので優秀なコンサルタントも実力不足のコンサルタントも玉石混交で採用することになりました。即戦力で採用された訳ですから研修期間はありませんから、直にプロジェクトに配置されることになります。玉石混交で同じプロジェクトに配置されると実力差が明らかになり、優秀なコンサルタントが実力不足のコンサルタントの業務を肩代わりすることになります。しかし、優秀なコンサルタント達は職位も給与も大差がないことが分かると当然、不満が爆発し早期退職し始めました。これは今回採用したコンサルタントだけでなく、既に勤めていたコンサルタントも同様です。これまで頑張って実績を上げて来たのに、実力の無い中途入社の方の方が高い給与なんて面白い訳がありません。しかし、残った実力不足のコンサルタントだけではプロジェクトは進める事が出来ませんので、プロジェクトは遅延し、お客様に叱られます。ほどなく、力不足を理解して実力不足のコンサルタント達が退職することとなりました。A社は大量採用には成功しましたが、採用戦略、そしてビジネスとしては失敗に終わったようです。

能力不足、仕事の仕方、仕事に対するモチベーションも含め、間違った人材を採用する事は業務品質の低下だけでなく、既存社員のモチベーションやモラルの低下にも繋がります。また、間違った人材のストレス耐性が高くない場合には様々な労務問題にも発展しかねませんし、もし早期に退職する場合には、更なる採用費用と新たな人材確保までの期間もかかります。これが、「採用は労務の要」と言われる由縁です。

面接の方法は会社により異なりますが、会社が採用活動をする上で重要な事項をまとめました。

①募集要項は、求める能力や経験を数字、具体例を用いて応募者がイメージし易い。
②評価項目、評価レベルが定義され、面接官で共有されている。
③面接官向けトレーニングを定期的に実施している。
④面接結果を書面やデータに残している。
⑤人事部と部門の面接結果が異なる場合には、協議し、どうするかを検討する。
⑥採用するかどうか迷うのであれば、無理に採用しない
⑦試用期間満了時に正式採用するかどうかを判断している。

この中で該当しない事項がある場合には、採用プロセスを見直すことをお勧めします。

私たちは、採用プロセスは勿論、コンピテンシー面接、そしてLABプロファイルによるポジションと候補者の行動特性とモチベーションマッチング評価を支援させて頂きます。日本では取り入れている会社は少ないですが、ポジションに必要とされる候補者の仕事に対する行動特性とモチベーションを評価することで、ミスマッチによる弊害を防ぐことが出来ると思います。
例えば、経理や給与計算のポジションに求められるのは、手順に沿って物事を進めるプロセス思考の人材です。新しいアイディアや方法を考え、物事を進めるオプション型の人材ではありません。ポジションに合わない型の人材を採用するとやる気が薄れ、実力を発揮出来なくなります。これ迄は試験で候補者の行動特性やモチベーションを評価する事はありましたが、ポジションとのマッチングは新しい取り組みです。興味ある方は、ご連絡ください。