Aさんから「会社に退職の話を切り出したら、退職を止められた。体調も良くないから有給休暇をとりたいけど、それも承認してくれない。」との相談を受けました。Aさんが勤務する会社は、洗脳教育で有名な会社(B社)でした。これ迄、Aさんは「凄く良い会社だ。B社で扱っている商品はみんなを幸せに出来る」と常に知人に言い、その商品を勧めていたそうです。完全に洗脳教育にはまっていたそうですが、両親の説得で目が覚めて退職を決めたそうです。話を聞くと、4年間勤めたけど病気でも有給休暇は1日も採れなかったこと、会社経費に該当するのに会社が支払われていないこと、及び6年間に渡って未払い残業代が発生していることが判明しました。この様な場合、労働基準監督署への申告、あっせんの申し立てという方法が定石ですが、Aさんは今直ぐに退職したいという意思を実現する為に、私はAさんと一緒にB社にAさんの意思を伝えに行く事にしました。(社労士はあっせんに関する業務以外で弁護士のように代理人になれません。よって、Aさんの代理として単独で行動出来無い為、付き添いという立場です。)

B社からは、Aさんの上司である営業部長、強面の総務部長、それに体格が良い若手社員3人が出てきました。当然、お茶もだして頂けず、全員でAさんを睨み、黙ったままでした。想定とおりの険悪なスタートでした。私は早速話を切り出し、Aさんは退職したい旨、未払い残業代約160万円の支払い、及び立替え経費80万円の精算をしたい旨を、Aさんに事前準備して貰った残業時間を記載したメモ、経費の計算書を見せながら説明しました。(ちなみに未払い残業代は過去2年分までしか請求出来ません。)私は「Aさんへの要求は正当なものはご存知のはずです。これ以上長引かせるなら、Aさんは労働基準監督に申告するそうです。そうなれば、マスコミ沙汰にもなるし対応が大変ですよ。御社の従業員の方々も、同じ様に未払い残業代を請求するのではないですか?Aさんは要求を認めて頂ければ、この件は終了すると言っています。勿論、Aさんから他の従業員の方に話が漏れることはないと言っています。」と伝えました。この最後の言葉に総務部長は反応して、「この件が漏れる事は無いのですね。」と、初めて私の目を見て確認してきました。私が頷くと、「合意書を作成します。」と言って、この会議は終了し、3日後に合意書が送られてきました。その内容は、当月末迄は有給休暇扱いとする、未払い残業代として160万円を支払う、立替え経費80万円を支払う、和解金として50万円を支払うと内容でした。B社が恐れるのは、今の労働環境が明るみになるのが最大の懸念事項だったので、和解金は他言無用を約束させる意味合いだと理解しました。こうして、Aさんは無事に退職することになりました。

B社は自分達が違法行為だと分かっていたようです。人件費を抑制し、極限まで従業員を働かせますので、疲労が溜まる従業員が出てきますが、洗脳された状態なので高揚感と会社へのロイヤリティが高く、労働問題として表に出ません。この流れから脱落した、洗脳が解けた従業員には静かに退職してもらうというのが、この会社の労務管理でした。洗脳教育は会社へのロイヤリティと従業員のモチベーションを高める為に行っている会社は少なくありません。しかし、人件費を抑制する為に従業員を酷使する会社は明らかに間違っています。適正な労働環境の整備と人件費の適性配分による人事制度を導入すべきでした。また、万が一、このような会社に入社し洗脳下にある場合には、呪縛が解けていないと途中で引き戻される可能性がありますので、早めに会社から隔離し、落ち着いてから話を進めるべきでしょう。

間違ってこの様な会社に入社した方は、未払い残業代請求、退職したいけど退職出来ない、退職勧奨、パワハラなど会社とのトラブルがあると、多くの方は労働基準監督署への申告、あっせん、労働審判というと手続きを考えると思います。その様な内容が書いてあるサイトも多いのですが、状況に依っては本人が直接行って交渉するなど他にも手があります。これには事前準備も必要ですが、最終的には覚悟と交渉力が決め手です。

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